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神聖な踊り、フラ
動きの中に秘められた意味を知らずして、フラを語るなかれ!
古代ハワイのポリネシアン系先住民の間で、神々を崇めるための宗教儀式の一環として踊られていたのが「フラ」。フラの踊りのベースとなっているのは、神話や伝説をモチーフにした「詩・歌」で、下半身でリズムをとりながら、上半身の動きで「言葉」を表現するのが基本とされています。ちなみにハワイにおける古代宗教とは、森羅万象あらゆるものに神が宿っているという「自然崇拝思想」。古代のハワイには「文字」が存在しなかったため、フラは踊りを通して、そんな大自然への畏敬の念や神託を、後世に伝える役目を果たしてきたといいます。つまりは、フラの踊り手は単なるダンサーではなく、肉体を使った「ハワイ文化の語り部」といってもいいでしょう。美しい動きをただ鑑賞するだけでなく、ひとつひとつの動きに込められた言葉(意味)を理解すれば、さらにフラへの興味は深まるはずです。
ハワイの神話「女神ペレ伝説」の中にも登場するフラの起源
フラの踊りには、ハワイの自然を表現しているものが多いようですが、古代のハワイでは「大自然=神」と考えられていました。そんな神々の中でも、ハワイの人々に最も人気が高いのが「火の女神・ペレ」。この神はタヒチの生まれで、ニイハウ島~カウアイ島から火山の噴火とともに南下し、最後はビッグ・アイランドのキラウエアに落ち着いたと言われています。いわばハワイ諸島を作った「創造の神」と呼んでもいいでしょう。この女神にはヒイアカという妹がいて、彼女がポーポエという半神から「フラ」を教わり、姉であるペレの前で踊ってみせたのが、フラの起源と伝えられています。
カヒコ(古典フラ)とアウアナ(現代フラ)の違いを知ろう
現在ハワイに伝わるフラには、大きく分けて2つのスタイルがあります。まずはフラ本来の様式を引き継いでいる「カヒコ」。これは神への奉納儀式のひとつで、打楽器を叩きながら詩を歌い、それに合わせて力強く厳粛な踊りが披露されます。神聖なものとされ、昔は選ばれた男性たちのみによって踊られていたといいます。しかし、18世紀に入り宣教師たちの渡来をきっかけに「自然崇拝を意味するフラは、キリスト教の布教に邪魔になる」とされ一時期禁止に。その後19世紀末、ハワイ国家主義を提唱したカラカウア王の時代に、復興の気運が生まれ、「カヒコ」に加えて新しい形のフラとして誕生したのが、「アウアナ」と呼ばれるモダンスタイル。これはギターやウクレレなどハワイ音楽と一体化しつつ発展したもので、美しく優雅な踊りが特徴とされています。
(写真左)カヒコ
(写真右)アウアナ
ユラユラとした手の動きは、ハワイの自然や感情を表現している
「フラ・カヒコ」と「フラ・アウアナ」はスタイルこそ違えど、上半身の動きで「言葉」を表現しているという点では同じです。手の動きにもそれぞれ意味があり、雨・風・波・太陽・月など、自然物を表現しているものもあれば、寒い・暑いなど、気候をあらわすものもあります。たとえば、両手を横方向にのばして揺らすのは「波」、両手をまっすぐに天に挙げるのは「太陽」といった具合。もちろん手だけでなく、顔による喜怒哀楽の表情の変化も重要なポイントとなります。つまりフラは、全身を使った「手話」のようなものと考えていいでしょう。
ハワイのフラには、日本の「武道」や「華道」に通じるものがある?
宗教的儀式がもとになっているフラを本格的にマスターするには、生半可な気持ちではいけません。常にひざを曲げて上体を低い位置に置き、リズミカルに腰を振るには、相当の体力・筋力が必要です。フラは決して女性だけのものではなく、男性ダンサーも力強いフラを披露します。踊りに込められた意味をきちんと理解し表現するにはハワイの文化や歴史に関する知識も必要不可欠です。よって、ハワイでフラを学ぼうとする人々は、「クムフラ」(フラの師匠)が主催する「ハラウ」(教室)に、幼い頃から通うのが一般的とされています。ハラウでは、踊りはもちろんのこと、ハワイ人としてのアイデンティティや歴史観もしっかり教え込まれます。技術的なことだけでなく、精神面も重要視されるという点では、日本の武道・華道・茶道などに似ている気もしますね。
フラの魅力のひとつ「チャント」や「メレ」にもご注目を!
フラの魅力は踊りだけではありません。「チャント」(詠唱)や「メレ」(歌)にも注目しましょう。「チャント」は詩(メッセージ)に抑揚をつけて詠唱にアレンジしたもの。森羅万象に存在する精霊の言葉そのものと言われ、カヒコで用いられます。一方、アウアナで用いられるのは「チャント」に節をつけた「メレ」と呼ばれる“歌”。歌詞の内容には、神々の棲む自然を賛美したもののほか、風習や愛、勝利への祈りなどを歌ったものがあります。フラを知るには、こうした「チャント」や「メレ」の意味を理解することが大切とされています。
フラの衣装いろいろ
フラの衣装には、ティ・リーフなど植物で作った腰蓑かスカートにチューブトップの組み合わせ、ムームー、ホロク(ロング・ドレス風のムームー)などがあります。また、ハワイの人々は植物にも神が宿ると考え、フラを踊る時にはレイを身につけます。さらに、マナが宿るとされる髪は切ってはいけないとも伝えられてきました。カヒコは、神聖で厳粛な踊りであることから、貴金属などの装飾品は一切避け、アースカラーを中心としたシンプルな衣装で踊ります。一方、アウアナは鮮やかでデザインや色・柄も自由度の高いムームー、ホロク、あるいはブラウスとスカートなどを着ます。フラのコンテストの採点では、衣装も重要なポイントのひとつです。なお、普段の練習の時は、パウスカートというギャザーをたっぷりとったスカートをはき、上にTシャツなどをあわせます。ダンサーは自分でパウスカートを縫うのだそうです。
  カヒコ(写真左)とアウアナは
衣装にも違いが
フラで伴奏に使われる主な楽器
ウクレレ イプ、イプ・ヘケ
おなじみの4弦楽器。アウアナ(現代フラ)でのみ使用される。 ひょうたんから作った打楽器。写真はイプ・ヘケ。
ギター プイリ
弦をゆるめ、スラック・キー・ギターとして使う。アウアナでのみ使用。 竹を縦に割いて作った楽器。2本持ち、叩いて音を奏でる。
ウリ・ウリ パフ
マラカスを逆さにしたような形に羽飾りをつけたもの。振って音を出す。 ヤシの木の幹をくりぬいて作った太鼓。